本研究会の主旨/目的

(1) 研究会設置のねらい

  医療が高度化,複雑化する中で,安全で質の高い医療への,患者,社会の要求はますます高くなっている.医療者個々人の技量のみで医療の質を保証することは困難になってきており,チーム,組織として医療業務を実施できるようなシステムの構築が不可欠である.一方,近年の医療制度改革に対応するため,病院の経営管理においては財務的視点が過度に強調される傾向があり,医療者を萎縮・疲労させ,病院組織の本来の役割を見失いかけていることが危惧される.したがって,病院が本来の役割を果たし,医療制度改革等の環境変化に適切に対応していくためには,質保証を一義とするシステム,すなわち質中心経営システムを確立することが,急務となっている.

  本研究会では,医療の質を中心に据えた質中心経営管理システムを開発し,それを導入推進するための合理的なプロセスの確立をめざす.提案する「質中心経営システム」は,日常診療における医療安全や診療の質保証に有用なだけでなく,顧客ニーズの変化・医療制度改革等の病院をとりまく厳しい環境変化に対応できる,以下の力量を病院組織が備えていくことを支援する.

① 提供すべき診療サービスを,安全で質保証された形で,職員が誇りをもって,顧客にきちんと提供することができる

② 顧客ニーズや病院をとりまく環境変化に,疲弊することなく,次々と対応していける能力を獲得し,持続的に成長していくことができる

  このような質中心経営管理システムとその導入推進モデルを開発するためには,複数の病院のトップマネジメントをはじめとする導入・推進の中心となる医療従事者(牽引者)と,質マネジメントを専門とする工学研究者らが,深い信頼関係を構築した上で試験的導入や実践を行える環境が必要である.このような研究方式は,先行する個別病院における研究・臨床活動の中で,構築されてきたものである.本研究会は,このような過去の実績,経験,知見をもとに,信頼関係の構築された病院との個別協議を通して,研究会組織とその活動計画が立案されている.

(2) 研究会のアウトプット

  本研究会では,以下を活動のアウトプットとする.

① 医療の特徴を考慮したQMS-H形態の提案

② 効果的かつ効率的なQMS-H導入推進プロセスの設計

③ QMS-H導入推進に必要な組織体制の整備と教育内容の体系化

④ 医療における質中心経営に必要とする知識の構造化

⑤ 介護におけるQMSが有する特性の把握

(3) 目的達成のための研究会の活動

  本研究会では,以下の活動を行う.

① 開発調整会議(全体会合)

  活動者:参加病院+研究者
  場  所:大学(東京大学  or  早稲田大学)

② 医療QMSモデル開発およびシステム導入推進モデル開発(共同研究グループでの研究)

  活動者:モデル開発病院+研究者
  場  所:モデル開発病院 or 大学

③ ②で開発された医療QMSモデルの検証(②のシステム導入と推進活動)

  活動者:モデル検証病院+研究者
  場  所:モデル検証病院 or 大学

④ 参加病院の実態に即したQMS-Hの導入支援

  活動者:研究者
  場  所:QMS-H導入病院

(4) 研究会組織と役割

  本研究会は,病院,研究者,アドバイザーで構成される.参加病院には,3つのタイプがあり,希望するタイプを各病院が選択する.

研究会組織
メンバー
役割
タイプ1:
モデル
開発病院
QMS-Hの導入推進に関する全体会合(開発調整会議)での報告
共同研究グループでの研究
情報交換会への参加
タイプ2:
モデル
検証病院
QMS-Hの導入推進に関する全体会合(開発調整会議)での報告
情報交換会への参加
タイプ3:
オブザーバ
病院
主に情報交換の目的で全体会合,情報交換会に参加
研究者QMS-Hモデル開発と,システムの評価検証手法開発
QMS-H導入推進モデル開発と,導入プロセスの評価検証手法開発
QMS-Hの導入推進支援
アドバイザー品質管理の専門家としてのアドバイス
情報提供

(5) 研究費

  大学で開催される会議参加のための交通費は,参加病院自弁とする.

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