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代表あいさつ

棟近雅彦
QMS(Quality Management System)とは,質のよい製品・サービスを組織的に提供し,さらに改善を行うための仕組み,仕事のやり方です.仕事のやり方を定めた業務手順書,実際に仕事をする人,仕事で使う設備やものなど,いろいろな経営資源から成り立っています. 質のよい医療を提供し,さらに質を向上していくためには,病院においてもQMSを運営し,組織的改善を進めていかなければいけないことは,近年では当然必要なことと認識されるようになってきました.
QMS-H (Quality centered Management System for Healthcare)研究会は,医療に適したQMSの形態はどうあるべきか,それを病院に導入・推進する方法はいかにあるべきかを研究しています.この研究会は,(一社)日本品質管理学会医療の質・安全部会の支援のもと,2007年に設立されました.医療を実務とする医療者と,大学の理工系で質マネジメントを研究する研究者が共同研究を行い,QMS-Hに必要な要素を開発し,それを病院で実践して検証することを継続的に行っています.また,医療の質マネジメントを進めるにあたって必要な基本的考え方,マネジメントシステム,手法等を,医療関係者の方々が学べるように,医療のための質マネジメント基礎講座などの様々なセミナーの開講,テキストの出版,シンポジウムの開催等により,啓発活動も行っています.
QMSの一つの形態は,産業界でも一定の成果をあげてきたTotal Quality Management(TQM)です.私たちは,医療のTQMを考えています.TQMを効果的に実施している組織に授与される賞に,デミング賞があり,研究会のメンバーである(株)麻生飯塚病院が,2022年に医療界ではじめて受賞し,医療TQMのひとつのモデルを提示することができました.ただし,これは当研究会が目指すところの通過点であります.最終的には,日本のすべての病院がQMSを適切に運営し,安全で質の高い医療が提供できる安全・安心な社会の実現を目指しています.
現在研究会では,20年弱のこれまでの活動を振り返り,今後どのような研究を行うべきかを議論し,研究会のビジョンを策定したところです.これからも,医療の質向上を通じて安全・安心な社会作りに貢献していく所存です.皆様のご支援をよろしくお願いいたします.
ビジョン
本研究会では,10数の医療機関との共同研究活動を行っていますが,その直接的な目的は,医療機関の特徴に合ったQMSモデルを開発することと,そのQMSモデルを如何にそれぞれの医療機関に効果的に導入・推進できるかの方法論を確立することです.しかし,これらの研究成果だけでは,医療機関が提供する医療サービスの質が向上するわけではありません.実際に,日本全国に8000程度あるといわれている医療機関に対してQMSを普及させ,各医療機関でQMSを導入し,運用することが当たり前の状況に持っていく必要があります.
QMSには,質の良い医療サービスを提供するためのプロセス・仕組みとともに,医療サービスの質や効率を組織的に改善するための仕組みも含まれています.医療機関が自らのQMSを自律的に運用することが当たり前になれば,日本全国的に医療サービスの質保証,質改善が可能となります.これが,本研究会が最終的に目指すビジョンです.
そして,このビジョンを達成するために,医療におけるQMSモデルの開発などの研究開発機能とともに,それらを日本全国に広めていく普及・推進機能の二つを有し,それぞれについて活動を行っています.特に後者の普及・推進では関連する協会団体,学会等との連携を行いながら進めています.
研究会の歴史
本研究会は,東京大学大学院工学系研究科(当時)の飯塚悦功氏が本研究会代表,早稲田大学理工学術院(当時)の棟近雅彦氏と東京大学大学院工学系研究科(当時)の水流聡子氏の二人が副代表となって,2007年に設立されました.当時は30名前後のメンバーがおり,工学系大学研究者,7つの参加病院の方々と,産業界でのQMS・TQM等に造詣の深いアドバイザー等が在籍していました.
QMS-H研究会での当初の研究活動は,PFC(プロセスフローチャート)による医療業務の可視化・標準化であり,いかに医療における業務や仕事のやり方を可視化,構造化できるかを研究していました.その後はPFCで可視化した診療業務を確実に実施するためのQMS教育体系,文書管理の仕組み化,業務改善のための手法としてPOAMなどの事故分析手法,内部監査,管理指標などについて研究を進めてきました.QMS-H研究会の当時の参加病院の多くがISO 9001に基づくQMS構築を目指したことと,大学研究者側も医療におけるQMSのあるべき形態がどのようなかを模索していたことともあり,TQMで言えば「日常管理」に活動の焦点が置かれていました.
2020年前後からは,既に確立した日常管理体制を基盤として,病院の経営方針・目標を達成するため仕組みとして方針管理に取り組む病院が多くなり,まさに医療におけるTQMモデルの確立に向けた活動に重点を移しました.その結果,本研究会開始当初から参加していた株式会社麻生 飯塚病院が,2022年にTQMに関する世界最高ランクの賞といわれるデミング賞を受賞しました.
以上の研究活動に加えて,これら研究成果を世の中に普及・促進するために,2010年から医療安全管理者養成研修の要件を満たした「医療の質マネジメント基礎講座(全14回)」を立ち上げ,2023年度時点までに延べ6,545名が受講しました.さらに,これまでの研究成果と病院での取り組み事例内容をいくつかの書籍(活動内容→書籍のセクションを参照)としてまとめ上げて出版しております.
参加組織
代表
- 棟近雅彦(早稲田大学理工学術院 教授)
顧問
- 飯塚悦功(東京大学 名誉教授)
- 水流聡子(東京大学総括プロジェクト構築&大学院工学系研究科 特任教授)
参加病院(2024年3月現在)
- 飯塚病院 https://aih-net.com/
- 大久野病院 http://www.oogunohp.com/
- 心臓血管センター 金沢循環器病院 https://www.kanazawa-heart.or.jp/
- 川口市立医療センター https://kawaguchi-mmc.org/
- 古賀総合病院 https://www.kgh.or.jp/
- 国立病院機構 埼玉病院 https://saitama.hosp.go.jp/
- 国立病院機構 仙台医療センター https://nsmc.hosp.go.jp/
- 前橋赤十字病院 https://www.maebashi.jrc.or.jp/
研究者メンバー
- 梶原千里(静岡大学情報学部 行動情報学科 准教授)
- 加藤省吾(電気通信大学大学院情報理工学研究科 情報学専攻 准教授)
- 金子雅明(東海大学情報通信学部 情報通信学科 教授)
- 佐野雅隆(拓殖大学商学部 教授)
- 下野僚子(早稲田大学理工学術院 経営デザイン専攻 准教授)
- 田中宏明(清水建設株式会社)
参加研究室
研究会事務局(早稲田大学理工学術院棟近研究室内)
- 担当:加藤,佐藤
協力団体
- 日本品質管理学会 医療の質・安全部会 https://jsqc.org/
- 日本臨床知識学会 http://www.jaclik.umin.jp/
入会について
メリット
QMS-H研究会へのメリットと入会条件は,以下となります.1年間のオブザーバー参加枠も用意しておりますので,ご興味ある方は問い合わせフォームよりご連絡ください.
- 研究会やGRに参加して,QMSの最新の取り組みや研究内容に関する情報を入手できる.
- QMSに取り組んでいる病院の方々と知り合え,悩みや取組時の工夫を共有できる.
- 他の病院の方々と一緒に,QMS推進の課題解決をおこなえる.
- 医療QMS/TQMに関する大学研究者からアドバイスや助言をもらえる.
- 医療の質マネジメント基礎講座に,割引価格で参加できる.
入会条件
- 院長がQMS導入・推進に強い意欲を持ち,リーダーシップを発揮されること.
- 共同研究グループ(GR活動)のうち,1つ以上に主体的に参加すること.主体的とは,GR活動のアウトプットを出すために,研究活動に参画することを指す.
- 年度始めに,各病院のQMSの導入・推進計画書(重点課題実行計画書)を提出し,年度終わりにその結果を提出,および,最終成果シンポジウムで報告すること.