第3回 品質の定義とその本質-要求や期待を満たすということ
前回の概要:前回は,品質を考えるには「顧客」と「商品・サービス」を明確にする必要がある,という話をしました.一般的に,目に見えるモノよりも,目に見えないサービス(医療を含めて)のほうが,それを適切にとらえるのが難しいことを説明しました.
品質に関する定義には色々とありますが,代表的なものをいくつか確認しておきたいと思います.
かつて日本産業規格(JIS)に存在した「品質管理用語」の規格(JIS Z 8101:1981)では,品質を「品物またはサービスが,使用目的を満たしているかどうかを決定するための評価の対象となる固有の性質・性能の全体」と定義しています.
ISO 9000では,「本来備わっている特性の集まりが,要求事項を満たす程度」と定義されています.また,品質管理会の大御所のひとりである久米均先生の『品質経営入門』の本では,「商品品質は,製品またはサービスの内容と顧客の要求あるいは期待との合致の程度」と説明されています.
これら3つの定義で共通している大事なことは,顧客の使用目的,要求事項,期待を,提供した商品・サービスがいかに満たしているかという点です.これが,品質の最も本質的な意味を表していると思います.
この本質的な意味に基づけば,顧客が求めているものを満たした商品・サービスが“品質が良い”となり,一方で満たなかった商品・サービスは“品質が悪い”ということになります.つまり,品質とは世界共通のある一定の基準で評価された絶対的な評価で決められるではなく,ニーズを満たしているかどうかという観点からの相対評価であるともいえます.逆にいえば,同じ商品・サービスであってもその提供先の顧客のニーズが違えば,品質の評価も異なるということです.医療サービスにおいては,患者によって必要な治療ニーズが異なるということは至極当たり前と思われるかもしれませんね.
このような品質の定義には,実はさらに別の深遠なる意味が隠されています.それは,品質の良し悪しは外的基準で決まるということです.商品・サービスを提供する側ではなく,その受け取り手側の判断基準によって決まるということです.これは,商品・サービスの提供にあたって行う必要のあるすべての活動は,外的基準をいかに満たせるかという目的のためになされるべきである,ということを示唆しています.
病院でいえば,医療者側が「医学的には適切な診療を提供した」と考えていても,患者が説明を十分に理解できず,不安を抱えたまま退院したとすれば,患者の期待を満たしたとは言い切れないかもしれません.もちろん,医学的妥当性は前提です.その上で,患者や家族が何を求め,何に困っているのかを捉えることが,医療サービスの品質を考える上で重要になります.
品質が何であるかを考えるということは,自分の都合のよい価値観ではなく,経営・事業,業務の目的(という外的な基準)に照らして,自分が今実施している活動が妥当かどうかを判断するということを意味しています.品質という言葉は,そのような目的志向の行動様式を我々に推奨しているのです.QMS-H研究会初代会長である東京大学・飯塚悦功先生はいつも「品質管理をやれば賢くなれる」とおっしゃっていましたが,その理由がまさにここにあるのです.
次回予告:次回は,品質の良し悪しを決める顧客とは誰なのかを,もう少し掘り下げて考えます.