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第4回 品質の良し悪しを決める顧客は誰か

2026.07.23会長ブログ

前回の概要:前回は,品質とは顧客の要求や期待を満たす程度であり,その良し悪しは提供側ではなく受け取り手側の基準で決まる,という話をしました.

 次にお話をするのは,“顧客は誰か”です.顧客とは,自社の商品・サービスを受け取って,対価を支払った方と考えがちです.もちろん,それはそれで間違いではないのですが,より一般的に考えてみると,商品・サービスを受け取った方と支払いをした人が必ずしも一致しないこともあります.

 例えばファミリー・カーは,支払いをするのは夫ですが,主に運転するのは妻かもしれません.また,どの車にするかについての選択権を持っているのも妻であることが少なくありません.子供たちは車による移動サービスを受けていますが,車の選択権はほぼないと考えてよいでしょう.

 この場合,購入した人と使用する人,選択した人,便益を受ける人が大きく異なることがわかります.ギフト商品については,贈る側と贈られる側の双方を顧客と捉えるべきでしょう.

 大学の顧客についても同じです.大学の顧客は実は学生ではなく,その学生が就職する企業,もっと広く言えば社会です.品質の良し悪しは,顧客のニーズをいかに満たせるかにかかっているわけですから,企業や社会から求められる人材をいかに輩出できるかが大学の品質である,という考え方ができます.

 病院で「顧客は誰か」と問われれば,まず患者が思い浮かびます.しかし,患者本人だけを見ていれば十分とは限りません.小児医療であれば保護者,高齢者医療であれば家族や介護者,地域連携であれば紹介元・逆紹介先の医療機関,在宅復帰であれば訪問看護や介護事業所も重要な受け手になります.

 さらに,救急医療や感染症対応を考えれば,地域住民や行政も無関係ではありません.病院がどのような医療をどの水準で提供するかは,地域全体の安心や社会的機能にも影響します.この意味で,病院の顧客は患者だけに限定して考えるよりも,複数の利害関係者として整理した方が実態に近いでしょう.

 このことは,B to Bにおいても同様です.例えば部品メーカにとって,顧客企業の購買部門と設計部門とでは求められるものが大きく異なることがしばしばあります.一般的に,購買部門は購入コストと納期についての要求が厳しく,設計部門は納入される部品の性能・機能そのものを重視する傾向があります.

 病院でも考えてみると,連携先の同じ医療機関であっても,その中で診療部門,検査部門,薬剤部門,看護部門,事務部門では,相手に求める情報や成果物が異なります.同じ「患者情報」であっても,医師が知りたい情報,看護師が知りたい情報,医事課が必要とする情報は同じではありません.

 品質を考えるためには,誰がその商品・サービスを受け取り,誰が評価し,誰に影響が及ぶのかを丁寧に考える必要があります.顧客を一人に決めつけるのではなく,顧客の多様性を踏まえて整理することが大切です.

次回予告:次回は,顧客が多様であることに伴って,ニーズも多様になること,そして品質が相対的な評価であることを考えます.

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