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第8回 品質の“品”は“しな”ではない-顧客価値を考える

2026.08.20会長ブログ

前回の概要:前回は,顧客に提供しているものは,目に見える商品・サービスそのものに限られない,という話をしました.スターバックスやハウスメーカーの例から,提供価値を考える重要性を確認しました.

 ところで,多くの方が品質管理の“品”という漢字を品物の“品(しな)”と解釈し,品質管理は工業製品のような目に見えるモノだけを扱っている学問であると誤解していることが少なくありません.

 しかしながら,この“品”は品格の“品(ひん)”であって,決して“品(しな)”を意味しているわけではありません.前回,スターバックスやハウスメーカーの例を説明しましたが,いずれも顧客に提供しているのは“ひとりでホッとできる空間”,“お客様に合った生涯生活スタイル”であり,工業製品のような物的なモノに限った話ではないのです.

 この点は,病院における品質管理を考える上で非常に重要です.医療は目に見えないサービスの側面が強く,しかも患者は専門知識の非対称性の中でサービスを受けます.だからこそ,説明のわかりやすさ,応対の丁寧さ,安心して相談できる雰囲気,チームとしての一貫性なども品質の重要な要素になります.

 顧客に何を提供しているのかを明らかにする際には,物的なモノやサービスそのものに限らず,それを超えた先にある何かをきちんと認識する必要があります.そのときに役立つ視点が「顧客価値」です.一般産業分野では,近年「顧客価値経営」というのが重要視されております.

 顧客価値とは,提供された商品・サービスを消費,使用する際にお客様が感じる効用,メリット,有効性のことです.市場に多くの類似商品・サービスが存在している場合には,その顧客価値を最も提供してくれそうな会社の商品・サービスを顧客は選ぶことになります.

 スターバックスは,“ひとりでホッとできる空間”という顧客価値を安定して提供しているからこそ,顧客に選ばれ続けていると考えられます.これは,店舗のデザイン,レイアウト,店員の対応などを,その顧客価値を機軸として丁寧にかつ一貫して設計しているからでしょう.

 顧客価値という言葉は病院では馴染みがないかもしれません.しかしながら,疾患の治癒やその緩和に限らず,治療中において「安心して療養できる」「納得して治療を選べる」「退院後の生活に戻れる」「家族も含めて支えられていると感じる」といった価値が考えられます.また,病院においても,類似の言葉として,患者経験価値という言葉でPX(ペイシェント・エクスペリエンス)サーベイが広く行われており,まさに,医療においてもこれらの価値提供のために,あらゆる診療プロセスを設計していくことが必要になっています.

 つまり,①まず顧客にどのような価値を提供するか,②その価値提供のためにどのような商品・サービスが良いか,③そのために組織としてどのようなプロセスを構築すればよいかを考える,この①→②→③の考える順序がとても大切なのです.

次回予告:次回は,品質が顧客の心理的満足度に与える影響の違いとして,「当たり前品質」と「魅力的品質」を取り上げます.

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