活動内容 ACTIVITY

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現在の取り組み

年に4回(6月,9月,12月,3月)の全体会合を開き,(1)~(3)の重点課題に対する研究を推進しています.3月は最終成果報告シンポジウムであり,1年間の研究成果を一般公開しています.

(1) 共同研究グループ活動(GR活動)

病院関係者と大学研究者による共同研究グループで,研究会での重点テーマについて研究しています.現在は,以下の4つのGRを推進しています.

①文書管理GR

病院の日常業務で使用されている文書(手順書やマニュアル)を活用して業務の標準化を組織的にかつ継続的に推進するための方法論を検討しているGRです.これまでに,以下のような研究成果を出しています.

  1. 文書を整理するための引き出しの機能としての「体系管理」
  2. 文書を作成してから保管するまでの流れを定義した「一元管理」
  3. 標準化を推進するための業務の整理
  4. 標準化を推進する事務局がどのような業務をしたらよいかの整理
  5. 標準化が組織内でどの程度進んでいるのかを診断できるツール開発

②日常管理GR

日常管理とは、診察、検査、投薬、手術といった日常業務に対してPDCAサイクルを組織として回すことです。各業務について「良い仕事のやり方を決める」、「仕事をできるような人的、物的資源を整える」といったことが必要になります。

医療業務において日常管理の基盤づくりとして重要なのは、仕事のやり方(プロセス)に着目した「プロセス管理」と、プロセスを着実に実施できる人材や力量を確保する「力量管理」と考えています。

現在、日常管理GRでは、臨床検査業務を事例とした力量管理に関する研究を行っています。臨床検査では、検査結果の変動と関連する要因を、特性要因図(フィッシュボーン)を用いて体系的に把握することが必要であることから、力量評価項目を明らかにするために特性要因図の作成や病院間での相互レビューを行いながら実践性の高い力量管理手法の開発と実証を進めています。

図a. 力量管理に関する研究の全体像

③教育GR

病院でQMSを推進していくためには,「なぜ,QMSが必要なのか」「QMSを導入・推進するためには,具体的にどのような活動を行えばいいのか」といったことを職員の方に理解してもらわなければなりません.そのため,医療の質・安全に関する教育・訓練を継続的に行っていく必要があります.

これまでに,医療の質・安全の向上を目指してQMSを実践できる人材を育てるための教育を「医療の質・安全教育」と呼び,そこで教えるべき教育項目を明らかにして,表Aのように一覧表にまとめました.現在は,この一覧表を活用し,各病院でQMSやTQMの教育プログラムを作成する方法や,教育の効果測定に関する研究に取り組んでいます.

表A:医療の質・安全教育項目一覧表

④維持継承GR

病院全体で医療安全活動や改善活動を継続していくのに,苦労されていませんか?病院機能評価を取得することや医療情報システム更新などのある一定期間のプロジェクトを始めてもしくは久しぶりに進めることにはある一定のパワーが必要です.しかし,それを維持し,さらに次の世代に継承していくためには,別のパワーや仕組みが必要です.QMS-H研究会では,10年以上組織的にQMSを続けている病院が数多く参加しています.その経験を見える形にすること,その見えたものをもとに意見交換ができるツールの開発を目指した活動をしています.

⑤総合評価指標GR

病院では,臨床指標,Quality Indicator(QI)によって,医療の質や診療の質を定量的に評価し,改善を図る試みがなされています.QMS-H研究会では,15年以上もの間,質改善の活動に取り組んできました.2024年度より,本GRを立ち上げて,各参加病院がどのような目的を達成するべくQMSの導入を決意したのか,そして,その効果はどのような指標に表れているのかを議論し,QMSの重要性について検討していきます.

(2) 参加病院の重点課題

各参加病院が自病院の経営課題等から,今年度取り組むべき重点課題を設定し,その解決に向けた活動を自立的に進めています.全体会合時に大学研究者から推進に関するアドバイスを行うとともに,参加病院間での意見交換を行うことで,より効果的な活動へとつなげる活動を行っています.各病院の具体的な重点課題テーマは,過去の最終成果シンポジウムのプログラムにてご確認ください.

(3) 学生による病院との共同研究テーマ

各大学の所属学生が修士論文・卒業論文研究において,病院との共同研究テーマを設定し,検討を進めています.テーマとしては,医療安全推進やQMS確立に向けた方法論や,災害時の事業継続に関する研究などがあります.具体的な共同研究テーマは,過去の最終成果シンポジウムのプログラムにてご確認ください.

これまでのQMS-H研究会関連の研究成果

これまでの研究成果のうち、汎用化された教育パッケージとして、「医療のための質マネジメント基礎講座」が開講されています。厚生労働省「医療安全管理者の業務指針および養成のための研修プログラム作成指針」に準拠し、医療安全管理者養成研修に対応しており、毎年多くの方に受講していただいています。医療のための質マネジメント基礎講座 についてはこちらのページをご参照ください。

これ以外にも多くの研究が実施されており、学会発表、論文投稿を経て、書籍化されているものがあります。2022年度までの成果をワーキンググループにより整理したところ、以下のような研究成果が報告されています。

研究分野(QMS−Hの構造) 報告の種類
学術論文 その他記事 書籍
フィロソフィー QMS−H 0 2 1
知識基盤 文書管理 0 7 1
PCAPS 1 1 7
生体肝移植 1 0 0
マネジメントシステムモデル QMS-H 4 10 1
プロセス管理 日常管理 9 3 0
改善システム 安全管理システム 0 6 2
内部監査 0 3 0
プロセスの可視化 PFC 0 3 0
プロセス管理 9 10 0
看護ケア 1 0 0
個別事故の分析 POAM 4 2 0
対策立案 7 1 0
転倒・転落 3 1 0
運用技術 KYT 1 0 0
教育 4 6 3
導入・推進 5 2 1

 

書籍

QMS-H研究会による代表的な書籍を紹介します。

フィロソフィー(QMS-H) PDFデータブック「業務効率化と患者安全-双方を実現する組織力向上のためのシステム-」(2024年),編者:QMS-H研究会企画運営委員会,発行:日総研,https://www.nissoken.com/book/17657/index.html
「組織で保証する医療の質 QMSアプローチ」(2015年),監修:飯塚悦功・棟近雅彦・水流聡子,著者:QMS-H研究会出版委員会,発行:Gakken
基礎知識(文書管理) 「医療安全と業務改善を成功させる 病院の文書管理 実践マニュアル」(2017年),監修:矢野真・棟近雅彦,編著:田中宏明・金子雅明・佐野雅隆,発行:メディカ出版
基礎知識(PCAPS) 「医療の質安全保障を実現する患者状態適応型パス」(2005年),著者:飯塚悦功,水流聡子,棟近雅彦,発行:日本規格協会
「医療の質安全保証を実現する患者状態適応型パス [事例集2006年版]  臨床プロセスチャートの検証調査結果(26件)付き」(2006年),著者:飯塚悦功,水流聡子,棟近雅彦,発行:日本規格協会
「医療の質安全保証を実現する 患者状態適応型パス [事例集2007年版]  標準診療計画の電子コンテンツ化」(2007年),著者:飯塚悦功,水流聡子,棟近雅彦,発行:日本規格協会
「医療の質安全保証を実現する患者状態適応型パス [電子コンテンツ2008年版]」(2009年),著者:飯塚悦功,水流聡子,棟近雅彦,発行:日本規格協会
「医療の質安全保証に向けた臨床知識の構造化(1) 患者状態適応型パス 電子カルテおよび病院情報システム搭載版電子コンテンツ」(2010年),著者:飯塚悦功,水流聡子,棟近雅彦,発行:日本規格協会
「医療の質安全保証に向けた臨床知識の構造化(2) 患者状態適応型パス―臨床知識の精緻化・一般化・実装」(2011年),監修:飯塚悦功,水流聡子,棟近雅彦,編著:PCAPS研究会,発行:日本規格協会
「医療の質安全保証に向けた臨床知識の構造化(3) 患者状態適応型パス[臨床知識の活用・分析]」(2012年),著者:飯塚悦功,水流聡子,棟近雅彦,発行:日本規格協会
「医療の質安全保証に向けた臨床知識の構造化(4) 患者状態適応型パス[臨床知識の活用・分析]」(2013年),著者:飯塚悦功,水流聡子,棟近雅彦,発行:日本規格協会
マネジメントシステムモデル(QMS-H) 「医療の質用語事典」(2006年),監修:飯田修平・飯塚悦功・棟近雅彦,著者:医療の質用語事典編集委員会,発行:日本規格協会
改善システム(安全管理システム) 「医療安全への終わりなき挑戦」(2005年),著者:三宅祥三,矢野真,棟近雅彦,河野龍太郎,発行:エルゼビア・ジャパン
「早わかり医療安全ハンドブック~誰もがつらい目にあわないために~」(2011年),著者:井上文江,林真由美,福村文雄,棟近雅彦,梶原千里他,発行:飯塚病院
運用技術(教育) 「医療安全管理テキスト」(2005年),編集:四病院団体協議会医療安全管理者養成委員会,発行:日本規格協会
「医療安全管理テキスト[第3版]」(2015年),編集:飯田修平,著者:棟近雅彦他,発行:日本規格協会
「医療安全管理テキスト[第4版]」(2019年),編集:飯田修平,著者:棟近雅彦他,発行:日本規格協会
運用技術(導入・推進) 「医療の質マネジメントシステム 医療機関必携 質向上につながるISO導入ガイド」(2006年),監修:飯塚悦功・棟近雅彦・上原鳴夫,発行:日本規格協会
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